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【連載第4回後編】日本人の食事摂取基準 2025年版で何が変わった? ― ミネラル(マンガン・ヨウ素)、結論
2026年6月2日
連載第4回後編では、目安量※1の数値が更新され3~5歳は1.5㎍から2.0㎍に上昇し、12歳以上の数値が0.5㎍~1.0㎍の範囲で全般的に下がったマンガンと、推定平均必要量※2と推奨量※3の数値が全般的に上がり、乳児と小児の耐容上限量※4も大幅に引き上げられたヨウ素について詳しく説明します。
●マンガン ― 代謝を支えるミネラル。数値が見直しに。
マンガンは、生姜等の根菜類やバジル、豆苗等の葉物野菜等に含まれています。
マンガンは、体内で酵素の働きを助け、代謝をサポートする役割を担っています。
日本人の食事摂取基準2025年版では、基準値の算出に用いるデータが見直され、2023年に実施された日本人の8日間の食事記録調査に基づき、18歳以上で最も摂取量が少ない年齢区分のデータをもとに再計算されたため、数値が更新されています。目安量は3~5歳は1.5㎍から2.0㎍に上がっていますが、12歳以上の数値が0.5~1.0の範囲で全般的に下がっています。
マンガンについては、通常の食生活において摂取不足による健康障害の報告はほとんどなく、日本人の現在の摂取状況に大きな問題はないと考えられています。日常の食事から自然に摂取できる栄養素といえます。
一方で、通常の食生活で過剰になることはほとんどありませんが、点滴などによる医療的な管理下で、長期間にわたり大量に摂取した場合には、神経系への影響が報告されています。そのため、耐容上限量が設定されています。
●ヨウ素 ― 甲状腺ホルモンに不可欠。基準値が引き上げに。
ヨウ素は海藻類(昆布、わかめ、ひじき、のり等)に含まれています。中でも昆布は布は群を抜いてヨウ素を多く含んでいます。日本では昆布等の海藻を摂取する食習慣があるので、ヨウ素が欠乏することはほとんどありません。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るために必要で、このホルモンは成長や発達、エネルギー代謝に関わっています。胎児の脳や骨格の発達にも重要です。
日本では慢性的にヨウ素が不足することはまれですが、不足状態が続くと、甲状腺の働きに影響を及ぼす可能性があるとされています。
ヨウ素の基準量は、日本人のヨウ素の必要量に関するデータが限られていたため、欧米の研究を参考に設定されてきました。2020年版では、成人の推定必要量を95㎍/日とし、推奨量を130㎍/日としていましたが、2025年版では、日本人のヨウ素吸収率などを考慮して成人の推定必要量を100㎍/日、推奨量を140㎍/日に引き上げました。そのことにより、推定平均必要量と推奨量の数値は全般的に上がっています。
ヨウ素は体内で甲状腺に取り込まれ、ホルモンの合成に関与しますが、過剰摂取は甲状腺機能低下などの問題を引き起こすことがあります。そのため、耐容上限量も設定されています。
2025年版では、乳児(0~11ヶ月)の耐容上限量が、韓国の調査を基に、250㎍/日から350㎍/日へ大幅に引き上げられました。また、小児(1~17歳)の耐容上限量も、尿中排泄量の推定方法の見直しにより、成人の体重を基準に平均値を算出した結果、大幅に増加しました。
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皆さん、第1回から第4回までお読みいただき、いかがでしたでしょうか?
2025年の食事摂取基準では、バイオマーカー※5の活用が進んでいる点に気づかれましたでしょうか。
従来の食事調査は自己申告に基づくため、記憶違いや過少・過大申告といった誤差が生じやすいという課題がありました。こうした課題を補うため、より客観的で信頼性の高い指標としてバイオマーカーの活用が進められています。今後は、食事摂取基準の策定や個人の栄養管理において、さらに重要な役割を果たすことが期待されます。
また、今回の改定では数値の変化に注目が集まりがちですが、変更されていない項目についても、多数の研究者が膨大な調査を精査しても変えるまでの判断に至らず、大切だから慎重に検討の上、変えていないという判断になっています。
今後の2030年版がどのように進化していくのかも注目されます。
妊活中・妊娠中の方にとって大切なのは、日々バランスの良い食事を心がけることです。特に葉酸は、妊娠前から意識することが重要です。こうした日々の積み重ねが、生まれてくる赤ちゃんへの最高の贈り物となります。
※1 目安量(AI: Adequate Intake)
目安量(AI: Adequate Intake)は、推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)や推奨量(RDA: Recommended Dietary Allowance)を設定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、現在の摂取状況や知見をもとに、健康維持に十分と考えられる平均的な摂取量を示す指標です。
※2推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)
摂取不足の回避を目的とし、健康な人(概ね自立した日常生活を送ることができる人)を対象に、性・年齢階級別に日本人の必要量の平均値を推定したものです。その集団の約50%がこの量を摂取すれば、必要量を満たし健康を維持できると推定される1日の摂取量です。
※3 推奨量(RDA: Recommended Dietary Allowance)
摂取不足の回避を目的とし、推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)を基に算定されます。ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(約97〜98%)が必要量を満たし、健康を維持できると推定される1日の摂取量です。
※4 耐容上限量(UL: Tolerable Upper Intake Level)
過剰摂取による健康障害の回避を目的とし、ある性・年齢階級に属するほとんどの人々が健康障害を起こさないと考えられる最大の摂取量を示す指標です。これを超えると、過剰摂取による健康障害のリスクが高まる可能性があります。なお、十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定されていません。
※5 バイオマーカー
ある栄養素の摂取量や栄養状態を客観的に評価するために使われる生体内の指標(生体成分や生理的反応)のことです。血液、尿等の生体試料中に含まれる物質や、体の生理的反応を通じて、特定の栄養素の摂取量や体内での利用状況、健康への影響を反映する指標を指します。ある栄養素の摂取量や栄養状態を客観的に評価するため利用されます。例えば、ナトリウムやたんぱく質摂取に対する尿中ナトリウムあるいは窒素排泄量、各種ビタミンの血清中濃度等。
出典:
日本人の食事摂取基準(2025年版)報告書| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
日本人の食事摂取基準(2020年版)報告書| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
【連載第1回】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 2020年版から2025年版で変更された栄養素
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260330/
【連載第2回】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 脂質(脂肪酸)
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260409/
【連載第3回前編】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ―脂溶性ビタミン
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260416/
【連載第3回後編】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 水溶性ビタミン
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260428/
【連載第4回前編】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― ミネラル(鉄、亜鉛)
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260520/
Last Updated : 2026/Jun/2 | CH-20260424-04