バイエル薬品は、一般社団法人ラブテリと共同で、コロナ禍での生活習慣の変化による、妊婦の栄養素摂取状況の実態を把握し、食生活やライフスタイル等が妊娠各期の栄養素摂取量への関連を検証するための調査研究を実施しました。
その結果をもとに、コロナ禍で新たに見えてきた、妊娠各期に必要な栄養素についてまとめたレポート「コロナ禍妊婦栄養研究白書」をご紹介いたします。

レポートのみどころ
- コロナ禍での調査で見えてきた自粛が妊娠期に与える影響を解説
- 妊婦のステージ別の栄養摂取状況について、栄養素別にわかりやすく解説
コロナ禍における妊婦の食生活の変化

時間と心に余裕が生まれ自炊率が高まり、また課題であった朝食欠食率も減少しました。しかし、食費予算が減少している結果もあり、すべて栄養状態に好ましい変化があったとは言い切れない状況でした。
妊婦のステージ別の栄養摂取状況

妊娠後期に向けて赤ちゃんの成長に伴って全体的に栄養摂取量が増えていくのが理想ですが、食事量が十分に増えない傾向にあり、炭水化物は後期に向けて減少し続け、カルシウムは中期がもっとも低値、妊娠中期・後期に付加量が設定されている鉄、葉酸は横ばいでした。栄養の不足•欠乏は妊娠の維持と赤ちゃんの成長に影響を及ぼすリスクがあることを呼びかけていく必要があることがわかりました。

多くの妊婦さんが栄養不足の状況にあり、栄養摂取量に与える影響因子として、日本人がもっとも低いとされている1)ヘルスリテラシーが大きく関係していました。ヘルスリテラシーの高い妊婦さんは適切な体重管理への理解度も高いことがわかりました。栄養摂取の重要性について、これからもすべての妊婦さんへの啓発がより必要です。
1) Nakayama, Kazuhiro, et al. "Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy." BMC public health 15.1 (2015): 1-12.
それぞれの栄養素の詳しい解説や産婦人科医によるコメントをご紹介
妊娠中、摂取を心がけるべきである葉酸、鉄、DHA、ビタミンDについて、それぞれの栄養素がなぜ妊婦さんや赤ちゃんのために重要なのかを詳しく解説しています。
また、レポートにおいて医学的内容をご監修いただいた佐藤雄一先生(産科婦人科舘出張佐藤病院院長、佐藤病院グループ代表)のコメントもご紹介します。
葉酸
全妊娠期を通じた不足率:87.1% *1
妊娠前から妊娠初期に食事からの摂取のみだけではなくサプリメントからの摂取も同時に行うことが望ましいとされる栄養素として知られています。葉酸は妊娠を維持するためや胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するために必要な栄養素です。
今回の調査によると、多くの妊婦さんが食事から十分に摂取できていないことがわかりました。葉酸不足は、悪玉アミノ酸であるホモシステインを体内にためてしまいます。ホモシステインは妊婦さんにも悪影響を及ぼすため、葉酸サプリメントは妊娠前・妊娠初期はもちろん妊娠期間を通じて活用することがすすめられます。
鉄
全妊娠期を通じた鉄不足率:97.8% *1
日本女性の“鉄欠乏症貧血”は5人に一人と多く、妊娠後期には約5割もの妊婦が貧血を経験する*2ともいわれています。母体の鉄欠乏は早産リスクや低出生体重児リスクを高めてしまう原因でもあり*3、妊娠期を通して、摂取することが望ましい栄養素です。
もっとも多くの妊婦さんが不足していた鉄は貧血や産後うつのリスクになるともいわれています。鉄は充足するまである程度時間がかかるので、早い段階から継続して十分に摂取するとよいでしょう。
DHA
全妊娠期を通じたDHA不足率:29.0% *1
妊娠中胎児の脳は急激に成長していくため、その材料となるDHAはより多く必要となります。国民健康・栄養調査によりn-3系脂肪酸(オメガ3)として妊婦の摂取量は把握できますが、DHAの摂取量は不明でした。今回の調査で国際機関の基準*4からは足りていないが3割程度だということが判明しました。
DHAは赤ちゃんの脳や視覚の発達に必要であるとともに、早産のリスクを減らすといった報告もあり、妊娠中は非常に重要な栄養素です。おもに魚から摂取できる栄養素ですが、今回の調査で妊娠初期につわりがあると摂れなかったという結果が出ました。妊娠中、思うように食事から摂れないときは、サプリメントを活用するのもひとつです。
ビタミンD
全妊娠期を通じた不足率:58.8% *1
ビタミンDは骨や歯の健康や妊娠合併症など母子の健康と成長に必須の栄養素です。日光を浴びて生成される方が食事からの摂取量よりも血中濃度を左右しやすいのが特徴です。
コロナ禍で外出機会が減少し、日光浴の頻度が低くなり、半数以上が不足・欠乏の可能性がありました。日焼け止めの使用でもビタミンDの生成量は少なくなります。母子の健康のために、適度な日光浴とビタミンDの摂取を妊娠中から産後にかけて呼びかけていく必要性を感じました。
* 1:不足率は本調査から得られた全妊娠期を通じての数値。(「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の妊婦推奨量に対して。DHAのみ国際機関の基準*4に対して。
* 2:渡辺優奈, et al. "妊婦の鉄摂取量と鉄栄養状態の縦断的検討." 栄養学雑誌 71.Supplement1 (2013): S26-S38.
* 3:小檜山敦子, and 成田みゆき. "妊産褥婦の貧血に関する国内の文献検討." 東京医科大学看護専門学校紀要 25.1 (2016): 1-9.
* 4:Joint, F. A. O. "Fats and fatty acids in human nutrition. Report of an expert consultation, 10-14 November 2008, Geneva." (2010).
まとめ
本調査研究を通じて、コロナ禍前後の妊婦さんの置かれる環境や食生活の変化において、在宅勤務率や自炊率のアップなど妊婦さんにとってよい状況なっている一方、依然妊娠中に重要な栄養の不足状態は続いていることがわかりました。バイエル薬品はコロナ禍でも妊婦さん・赤ちゃんの健康のためマルチビタミンサプリ「エレビット」を通してサポートしていくとともに、妊娠に関わるすべての方々に役立つ情報提供に努めていきます。
詳しい調査結果や栄養素の解説については、レポート(PDF)をダウンロードしてお読みいただけます。
【 調査方法 】
妊娠中の女性を対象にライフスタイルに関するアンケート(※1)、栄養摂取状況・食品摂取状況の結果(※2)を実施し、集計
※1:居住都道府県、年齢、身長(cm)、体重(kg)、妊娠前体重(kg)、活動量、サプリメント使用状況、鉄剤服用有無、妊娠悪阻有無・程度、家族構成、調理スキル、自身の栄養状態への自覚、ビタミンD欠乏状態(※3)、産後の栄養法に対する意向、ヘルスリテラシー(※4)など
※2:東京大学 佐々木敏教授による簡易型自記式食事歴法BDHQ:brief-type self-administered diet history questionnaireをオンライン版に構築されたものを利用
※3:「J Bone Miner Metab. 2019 Sep;37(5):854-863.」より引用改変
※4:「高泉佳苗, et al. 日健教誌.2012; 20(1): 30-40.」
【 調査期間 】 2021年12月〜2022年5月
【 解析対象 】 677名
【 調査地域 】 全国47都道府県
佐藤 雄一 先生
順天堂大学医学部大学院卒業。生殖内分泌や腹腔鏡手術が専門。年間約1500件の分娩に携わり、プレコンセプションケアの観点から食事や栄養、運動など生活習慣の大切さを指導している。
今回の調査により、妊娠中の女性の多くは必要な栄養素が不足しがちであることが明らかになりました。1日の食事の写真をアップロードして普段の食事からどれだけ栄養が摂れているかチェックできるツールを使ってみるのもおすすめです。
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Last Updated : 2022/Oct/4 | CH-20221003-01