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【連載第4回前編】日本人の食事摂取基準 2025年版で何が変わった? ― ミネラル(鉄・亜鉛)
2026年5月20日
妊活中や妊娠を考えている方にとって、「鉄」や「亜鉛」は特に重要な栄養素です。2025年版の日本人の食事摂取基準で、いくつかの見直しがありました。
ミネラルの基礎
人間の体は、主に酸素、炭素、水素、窒素の4つの元素で85%が構成されています。それ以外の骨や歯の材料となるカルシウムやリンなどを含むすべての元素をミネラル(無機質)といいます。
ミネラルは、代謝を促進したり、血液、骨や歯などをつくったりと、さまざまな働きをする大切な栄養素です。
ミネラルは体内にごく微量しか存在しませんが、体内で合成ができないため食べ物から摂取することが必要です。
私たちの体に必要とされる必須ミネラルは、16種類ありますが、日本人の食事摂取基準では、そのうち13種類について推奨量※1や目安量※2を設定しています。1日の推奨量や目安量が約100mg以上のミネラルを「多量ミネラル」、100mg未満のものを「微量ミネラル」と分類しています。塩素、イオウ、コバルトは、他の栄養素とともに摂取されるため、単独での基準は設定されていません。例えば、塩素はナトリウムと結合した食塩として摂取できます。
連載第4回では、このうち微量ミネラルに焦点を当てて解説します。
前編では、2025年版で耐容上限量※3が撤廃された鉄と、日本人の尿中排泄量の数値を採用したことにより数値の精度が向上し、推定平均必要量※4、推奨量、目安量が0.5mg刻みとなった亜鉛について詳しくご説明します。
後編では、マンガン、ヨウ素についてご説明します。
●鉄 ― 女性に重要なミネラル。耐容上限量が撤廃に。
鉄は、豚や鶏のレバー、赤身の肉や魚介類、青のりなどの海藻類、小松菜などの緑黄色野菜に多く含まれます。
鉄は全身に酸素を運ぶ赤血球に含まれるヘモグロビンを構成するミネラルです。体内の鉄は、様々な酵素の構成成分にもなっており、肝臓での解毒や、エネルギー代謝にも関わっています。
食品中の鉄は、多くは動物性食品にはヘム鉄、植物性食品には非ヘム鉄という形で存在しています。
これまでヘム鉄の方が吸収されやすいとされてきましたが、体内の鉄の貯蔵量(不足の程度)に応じて吸収率は変動します。そのため、非ヘム鉄を含む食品も組み合わせて摂ることが大切です。
鉄が大きく不足すると、貧血をはじめ、運動機能、認知機能等の低下を招くことがあります。
特に、月経のある女性や妊娠中の方は不足しやすく、注意が必要です。月経中は血液を失うため、鉄欠乏性貧血の発症のリスクが高まります。また、妊娠時には鉄の必要量が増えるため、妊娠初期・中期・後期それぞれで付加量が設定されています。
日本人の食事摂取基準では、女性「月経あり」「月経なし」の区分があり、「月経あり」の女性の推奨量は多くなっています。また、妊婦の付加推奨量として、初期は+2.5mg、中期・後期は+8.5mg、授乳婦は+2.0mgが設定されています。例えば、18歳~49歳の妊婦の方は、推奨量6.0mgに必要とされている付加量を加算して、それより下回らないように心がけましょう。
日本人の食事摂取基準2025年版では、これまで設定されていた鉄の耐容上限量は撤廃されました。
2025年版では、これまで設定されていた鉄の耐容上限量が撤廃されました。これは、遺伝子の異常やアルコール性肝障害がない場合、食事からの鉄の過剰摂取が胃腸症状を除いて他の健康障害を引き起こす明確な証拠が十分ではないと判断されたためです。
その結果、これまで男女ともに1歳以上で設定されていた耐容上限量の成人男性45mg/日、成人女性40mg/日は、すべてなくなりました。
ただし、これは無制限の継続的摂取を推奨するものではなく、個々の健康状態や生活状況に応じた適切な管理が求められます。鉄の過剰摂取は、体内への蓄積により臓器への影響や、生活習慣病のリスクを高める可能性が指摘されています。
●亜鉛 - 細胞の生成をサポート。妊婦区分が新設される。
亜鉛 は、全ての細胞に含まれる成分であるため、魚介類、レバー等の肉類、豆類などのたんぱく質を含む食品に多く含まれています。特にカキの亜鉛の含有量は群を抜いています。また、パルメザンチーズにも多く含まれています。
亜鉛は、たんぱく質やDNAの合成に関わり、新しい細胞形成に重要な役割を担っています。亜鉛の作用は、皮膚の健康、免疫反応、生殖機能の維持など多彩です。舌の表面にある味蕾(みらい)の細胞の新陳代謝に亜鉛が必要なため、味覚機能の維持にも関わっています。
2025年版の変更点
- 乳児以外で設定されている推定平均必要量、推奨量は、日本人の尿中排泄量の数値を採用したことにより精度が向上し、目安量を含め、鉄と同様に 0.5mg刻みで示されるようになりました。
- 策定方法自体に変更はありませんでしたが、 乳児の目安量は、母乳の栄養量から換算されているため、目安量の年齢区分の0~5、6~11月で変更があり、 わずかに下がっています。
- 妊婦(付加量)の区分で、初期、中期・後期の欄が新たに設けられました。
母乳中の亜鉛の濃度は、分娩後に日数とともに低下することが知られていますので、母乳中亜鉛濃度を保つ観点で設定され、授乳婦の付加量が設定されています。
2025年版では、これまでの複数の研究データの平均値を用いていた方法から、出産後の日数によって変化する母乳中の亜鉛濃度を反映した計算方法に見直されたため、授乳婦の付加量は+4mgから+3.0mgへ変更されました。
亜鉛が大きく不足すると、皮膚炎、味覚障害、慢性下痢、免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害を引き起こすリスクが高まります。日々の食事などから継続的に摂取することが重要です。
後編では、マンガン、ヨウ素をご説明します。次回も是非ご覧ください。
※1 推奨量(RDA: Recommended Dietary Allowance)
摂取不足の回避を目的とし、推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)を基に算定されます。ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(約97〜98%)が必要量を満たし、健康を維持できると推定される1日の摂取量です。
※2 目安量(AI: Adequate Intake)
目安量は、推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)や推奨量(RDA: Recommended Dietary Allowance)を設定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、現在の摂取状況や知見をもとに、健康維持に十分と考えられる平均的な摂取量を示す指標です。
※3 耐容上限量(UL: Tolerable Upper Intake Level)
過剰摂取による健康障害の回避を目的とし、ある性・年齢階級に属するほとんどの人々が健康障害を起こさないと考えられる最大の摂取量を示す指標です。これを超えると、過剰摂取による健康障害のリスクが高まる可能性があります。なお、十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定されていません。
※4 推定平均必要量(EAR: Estimated Average Requirement)
摂取不足の回避を目的とし、健康な人(概ね自立した日常生活を送ることができる人)を対象に、性・年齢階級別に日本人の必要量の平均値を推定したものです。その集団の約50%がこの量を摂取すれば、必要量を満たし健康を維持できると推定される1日の摂取量です。
出典:
日本人の食事摂取基準(2025年版)報告書| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
日本人の食事摂取基準(2020年版)報告書| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
日本人の食事摂取基準(2025年版)策定ポイント(スライド集)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
【連載第1回】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 2020年版から2025年版で変更された栄養素
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260330/
【連載第2回】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 脂質(脂肪酸)
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260409/
【連載第3回前編】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ―脂溶性ビタミン
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260416/
【連載第3回後編】日本人の食事摂取基準 2025年版で変更された栄養素 ― 水溶性ビタミン
https://www.elevit.jp/ninkatsu/news/DRI2025/20260428/
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鉄|含まれる食べ物は?葉酸との関係は?
https://www.elevit.jp/nutrition/folic-acid/iron/
妊婦さんに必要な栄養素「鉄」について - エレビット
https://www.elevit.jp/ninshin/news/20250707-1/
プレコンセプション期から産後まで、 鉄や葉酸などの栄養補給を心がけて健やかな1000日を(前編)
牧野真太郎 先生
https://www.elevit.jp/doctorqanda/10/
亜鉛|含まれる食べ物は?妊活・妊娠中に必要?
https://www.elevit.jp/nutrition/folic-acid/zinc/
亜鉛は男性妊活に欠かせない栄養素
https://www.elevit.jp/ninkatsu/ninkatsu-m/nutrition/zinc/
Last Updated : 2026/May/20 | CH-20260424-03