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妊娠したら知っておきたい
「腸内フローラ」の話

妊娠期から授乳期にかけて、「赤ちゃんのためにできることをしたい」と思う方は多いのではないでしょうか。近ごろ注目されているのが、人の健康に深く関わる「腸内フローラ」です。腸内フローラは、お母さんの健康だけでなく、赤ちゃんの健康にも関わる大切な要素です。しかし、「お母さんと赤ちゃんの腸内フローラはどのように関係しているの?」「どうやって整えればいいの?」「どんな生活を心がければいいの?」と迷う方もいらっしゃるかもしれません。今回は、関西医科大学小児科学講座主任教授の金子一成先生に、妊娠期から授乳期における腸内フローラの役割と、無理なく育むコツについてお伺いしました。

※ バイエル薬品(株)が金子一成先生にご依頼し、いただいたコメントを編集のうえ掲載しています。

腸内フローラってどんなもの? どんなはたらきがあるの?

約38兆個の細菌が共存する腸内の生態系。免疫や消化を助ける重要なはたらき

私たちの腸の中には約38兆個(ヒトの全身の細胞数とほぼ同じ)もの細菌がすんでおり、バランスを取りながら共存しています。この様子が顕微鏡で見ると、花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれます。腸内フローラは単に存在しているだけでなく、消化を助けたり、病気から体を守る免疫の調整を行ったり、ビタミンを合成するなど、体にとって重要なはたらきをしています。
腸内細菌はそのはたらきによって「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3つに分類されます。これらの理想的なバランスは「善玉菌:悪玉菌:日和見菌 = 2:1:7」とされており(図1)、このバランスが崩れると、体調の変化を感じやすくなることがあります。

図1 善玉菌・悪玉菌・日和見菌の理想的なバランス

善玉菌・悪玉菌・日和見菌の理想的なバランス

妊娠中は体が大きく変化するタイミング

お母さんの腸内フローラが赤ちゃんを守り、育てるためにダイナミックに変化

妊娠中はお母さんの体内でホルモンバランスなどが大きく変化しますが、腸内フローラも変化する可能性があることが報告されています。妊娠後期には腸内細菌の多様性が少し下がることが一部の研究で示されていて、お母さんの腸内フローラが「感染から身を守る体質」や「赤ちゃんのためにエネルギーをため込みやすい体質」へと自然にシフトしていくことがわかっています。これは決して病的なものではなく、赤ちゃんを育むための大切な生理的変化です。
一方で、この時期は便秘になりやすかったり、つわりによる食生活の偏り、ストレス、睡眠の乱れなどが重なったりすることで、腸内環境のバランスが崩れやすい時期でもあります。

 

妊娠~授乳期に腸内フローラが大切な理由

「人生最初の1000日」が赤ちゃんの将来の健康基盤をつくる

受精から生後2歳までの約1000日間は「人生最初の1000日(first 1000 days)」と呼ばれ(図2)、ユニセフやWHOは、この期間の適切な栄養が子どもの将来の健康維持に重要であると提唱しています。
この時期は腸内フローラの形成期、つまり“設計図”がつくられる時期で、腸内環境の乱れは、将来のアレルギー疾患や肥満などとの関連が指摘されています。だからこそ、この期間にお母さんが腸内フローラを意識した生活を送ることが、赤ちゃんの長期的な健康の基盤を築くうえでとても大切になります。

図2 人生最初の1000日

人生最初の1000日

妊娠中、お母さんと赤ちゃんをつなぐ腸内フローラ

胎盤を通じて母体から赤ちゃんへ届けられる、お母さんの腸内フローラの影響

お腹の中の赤ちゃんの腸内にはほとんど菌は存在せず、お母さんの腸内細菌の代謝産物(短鎖脂肪酸やビタミンなど)が、胎盤を通じて赤ちゃんに届けられています。そして出産時、経腟分娩の場合、赤ちゃんはお母さんの腟内や腸内細菌にさらされます。これが赤ちゃんにとっての「最初の菌」との出会いとなり、生まれた直後から腸内フローラの形成が始まり、乳酸菌・ビフィズス菌などの善玉菌が早期に定着します。

 

産後の赤ちゃんの腸内フローラはどう形成される?

授乳から生活環境まで、様々な要因が腸内フローラを育む

授乳方法は腸内フローラの形成に関係します。母乳には赤ちゃんの善玉菌(ビフィズス菌)を選択的に増やす成分(ヒトミルクオリゴ糖:HMO)が多く含まれており、善玉菌優位の腸内環境づくりをサポートします。そのほか、きょうだいやペットがいる環境は、多様な菌に触れる機会となり、腸内細菌の多様性を高めるためによい影響を与えます。

 

「和食」がおすすめ。お母さんと赤ちゃんを守る腸内フローラの育て方

食物繊維と発酵食品をセットで摂る「和食」が腸内フローラを整える

腸内フローラを育むために一番大きな影響を与えるのが「食事」です。おすすめは、「ま・ご・わ・や・さ・し・い(豆類、ごま、わかめなどの海藻類、野菜、魚、しいたけなどのきのこ類、芋類)」の頭文字で表される食材を取り入れた伝統的な和食です。和食は、生きた善玉菌(プロバイオティクス)が含まれている発酵食品と、善玉菌のエサとなる食物繊維(プレバイオティクス)(図3)をバランスよく摂ることができます。
腸内フローラを意識した食事でやりがちな落とし穴は、「発酵食品さえ食べればいい」と思い込むことです。腸内細菌が定着するためにはエサとなる食物繊維が必要不可欠なので、セットで摂るようにしましょう。また、急に食物繊維を増やしすぎるとお腹が張ることがあるため、少しずつ増やし、水分もしっかり摂ることが大切です。

図3 プロバイオティクスとプレバイオティクス

プロバイオティクスとプレバイオティクス

サプリメントは「継続のしやすさ」がポイント

食事を基本にしつつ、サプリメントで善玉菌を無理なく補う

妊娠期から授乳期は栄養の必要量が増える時期ですが、つわりや育児での時間の制約などで食事内容が偏ってしまうこともあります。「プロバイオティクス(生きた善玉菌)」は、食事から取り入れることを基本としながら、手軽に摂取できるサプリメントを活用するのもひとつの方法です。
サプリメントのメリットとしては、「不足しがちな特定の菌株を、一定量摂れること」や、「続けやすいこと」があげられます。プロバイオティクスは一度摂ればずっと腸にすみ着くわけではないため、継続して摂ったほうがよいといわれています。毎日食事で完璧を目指すことは難しいので、時にはサプリメントなどで補充しながら、お母さん自身が無理なく続けられる方法を選んでください。

金子先生のアドバイス―妊娠期から授乳期に知っておきたい腸内フローラのポイント

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 腸内フローラは、免疫の調整や消化を助けるなど、体の健康維持に欠かせない役割を果たしています。

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 受精から生後2歳までの「人生最初の1000日」が、赤ちゃんの腸内フローラの形成期であり、健康の基盤をつくる重要な時期とされています。

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 妊娠期から授乳期を通して、お母さんの腸内フローラが胎盤や母乳を通じて赤ちゃんの腸内フローラの形成に影響を与えます。

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 腸内フローラのバランスを整えるには、「ま・ご・わ・や・さ・し・い」に代表される食材を意識した和食がおすすめです。食物繊維(善玉菌のエサ)と発酵食品(善玉菌)をセットで摂りましょう。

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 毎日バランスのとれた食事が理想ですが、それを続けるのは大変です。サプリメントで善玉菌(プロバイオティクス)を補うなど、無理なく続けることが大切です。

金子一成先生プロフィール

金子一成先生

金子一成先生
関西医科大学小児科学講座主任教授

新潟大学医学部卒業。順天堂大学小児科、大学院、英国ロンドンの小児病院腎臓科、順天堂大学浦安病院小児科助教授を経て、関西医科大学小児科学講座教授に就任。2021年より副学長・理事、2023年医学部長および大学院研究科長に就任。現在は小児腎泌尿器病学および腸内細菌学の第一人者として国内外で幅広く活動し、多数の学会役職や国際的な研究実績を有する小児医療のエキスパートとして活躍。

妊娠・授乳中のママと赤ちゃんのために

“科学的根拠のある”3種の
生きた善玉菌

Last Updated : 2026/Jul/22 | CH-20260707-08