トップ>妊活TOP>【特集】一緒なら、もっといい妊活> エキスパート医師 辻村先生の男性妊活アドバイス一問一答!
2022年4月にエレビット会員さまに行った、「男性妊活・不妊治療について」のアンケートの結果、67%のカップルが「不妊原因の半分が男性要因であることを知っている」と回答したにもかかわらず、全体の回答者の60%が「男性妊活に取り組んでいない」ことが分かりました。
男性妊活にも取り組んだ方が良いことには気づいているけれど、何から始めればよいのだろう?
疑問やお悩みを募集したところたくさんのご質問をいただきましたので、男性不妊治療のエキスパート医師 辻村 晃 先生に答えていただきました!
※ バイエル薬品(株)から辻村 晃 先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
辻村 晃 先生 プロフィール
順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授
兵庫医科大学卒業。国立病院機構大阪医療センター泌尿器科、米国ニューヨーク大学泌尿器科 細胞生物学臨床研究員、大阪大学医学部附属病院 病院教授などを経て、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授。日本泌尿器科学会 専門医、日本性機能学会 専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医 など。
教えて辻村先生!
男性妊活って何から始めればよいですか?
Q. 男性妊活は何から始めればよいですか?
子どもが欲しい!今から妊活を開始しよう!と思われている方は、男性不妊の原因がないか、子供を作る能力がどの程度あるのかを知る検査、いわゆるブライダルチェックを一回受けるとよいと思います。ご自身の今の精液や男性力の状態を把握することは妊活を始める第一歩になります。ただし、精液所見が数値的に問題なかったとしても、必ずしもその後、常に問題がないことを保証するわけではありません。1回目の精液検査所見が正常であった人でも、2回目の検査では1/4の人が異常所見を示すことが報告されています。精液所見が異常であっても、不規則な生活習慣を正すことで改善が見込めることもあります。
Q. 検査でわかる男性不妊の原因を教えてもらえますか?
① 睾丸が精子をうまく作れない、あるいは精子の質が悪い造精機能障害
② 精子は睾丸で問題なく作られているものの、うまく出てこない精路通過障害
③ 性行為そのものがうまくできない性機能障害
男性不妊の原因は、大きくはこの3つに分類されます。特に①②はご自分ではわかりませんので一度検査を受けられることをお勧めします。
Q. どこに検査、相談に行ったらよいかわかりません・・・
男性不妊を専門的に診察している泌尿器科なら安心ですが、残念なことに数がかなり限られます。次におすすめできるのが、男性不妊を診察する泌尿器科の医師が定期的に訪れている不妊治療クリニックです。また、産婦人科の先生の中で男性不妊に対する診療にも力を注いで診療されておられる医療機関もご相談に行かれてもいいかと思います。
一般の方は、ネットで検索されると思いますので、「日本生殖医学会 生殖専門医 泌尿器科」「生殖専門医、男性不妊」などでお調べになると男性不妊に詳しい泌尿器科の専門医を検索することができます。
Q. 男性の年齢は影響しますか?
女性の卵子ほど加齢の影響は受けないものの、それでも精液の状態も年齢と共に悪化します。影響を受けやすいのは、精液量、精子の運動率や正常形態率です。また精子のDNA断片化率(精子の質)も悪化します。精子の質が悪化すると、妊娠率が低下し、流産率が上昇することが知られています。若返ることはできませんので、もしお子さんを欲しいとお考えなのであれば、なるべく早くお二人で妊活に取り組んでいただければと思います。
Q. 第二子がなかなかできません。男性側の問題はあるのでしょうか?
第二子不妊で悩まれておられる方も結構いらっしゃいます。第一子の誕生でさほど苦労しなかった人は、第二子もすぐにできるだろうと思っておられることが多く、第二子不妊を現実的な問題として受け入れていただくのに時間を要する場合があります。
第一子誕生後に造精機能を悪化させるような生活習慣の変化、精路における感染症、高熱を発する疾患など第二子不妊の原因となることもありますし、単に加齢の影響も否定できないでしょう。
Q. 元気な精子を得るためにどういう生活習慣を送った方が良いですか?
しっかりと睡眠をとること、適度な運動をすること、食生活の改善を心がけることです。特に、メタボリックな因子として、血糖値、コレステロール値や血圧をコントロールすることが重要になります。精液の改善は通常3ヵ月は必要としますので、まずは3ヵ月間、頑張ってみてください。
また、生活習慣に変化がなくても、睡眠の状態、食事内容、精神的なストレスも精液所見を変動させます。妊活を目指した体調管理を日々心がけることが重要になります。
Q. 元気な精子を得られるタイミングってありますか?
精液の状態には季節的な変化があるか、あるいは午前と午後で変化があるかなど、これまでいくつか臨床研究がなされていますが、さほど気にする必要はないと思います。大事なのは禁欲期間です。これは、精液の状態に確実に影響します。一般的には、こまめに射精しておいた方が精子の質がよいとされていますので、タイミング療法を試みられている方は定期的に射精することをおすすめします。ただし、精子濃度が低い方は、禁欲期間を長めに取ることもお考え下さい。これまでの研究からは、禁欲期間が長くなれば精子濃度が上昇することが知られていますが、その濃縮効果は1週間程度が目安になります。それ以上、禁欲しても濃度は上昇しません。濃度を増やしたいと思う人は1週間程度の禁欲期間が望ましいと思われますが、ただし、この場合も精子の質は低下してしまいますので注意が必要です。その方にもっとも適した禁欲期間についてはかかりつけの先生とご相談ください。
Q. 精子の数や運動率や奇形率が大事だと聞いたことがあるのですが、精子の質とは何ですか?
2021年にWHOのマニュアルが改定されました。精液検査に追加が推奨される検査として、精子のDNA断片化測定と精液の酸化ストレス測定が記載され、初めてその重要性が強調されました。
精子数や精子の運動性や形態に問題がなくても、DNA断片化率が高ければ妊娠率が低下し、流産率が上昇することが明確になってきたからです。喫煙や過度の飲酒、感染、精索静脈瘤の存在などが精液の酸化ストレスを上昇させ、その結果、精子DNA断片化率が上昇することも知られています。これから男性妊活に取り組まれる方は、精子の数や運動率や形態だけではなく、精子や精液の質についても検査してもらうと良いでしょう。
Q. たばこやお酒をやめることができません・・・
たばこは間違いなく精子に影響を与えます。喫煙に関するこれまでの多数の研究から、喫煙している人の方が精液の状態が不良、すなわち、精子濃度や精子運動率の低下していることが明らかとなっています。また、先ほどお話しした精子の質であるDNA断片化率や精液の酸化ストレスにも悪影響をおよぼします。
お酒については、適度な飲酒であれば問題はないけれど、深酒になってくると精液の酸化ストレスが上昇することや、睡眠の質が低下することから精液所見に悪影響が生じると言われています。過度な飲酒は控えたほうが良いでしょうね。
なかなかたばこやお酒をやめることができないということ自体からくるストレスは心配ではありますが、事実としてこれらが妊活には悪影響だということは知っておいていただければと思います。
Q. 何を食べたら良いでしょうか?
何を食べたらいいかという質問は極めて難しく、これを食べたら精液の状態がよくなりますよというような食べ物は今のところないです。もし外食やコンビニ食が多い生活をされているのであれば、ジャンクフードを避けてサラダなどの1品を足してバランスをとることがおすすめです。
男性妊活においては、亜鉛、ビタミンなど抗酸化力を持った栄養素が重要ですので、バランスの良い食事はなるべく頑張っていただき、サプリメントの力にも頼るのはいかがでしょうか。
Q. サプリメントを飲むことで、本当に精子の状態の改善はみられるのですか?
全員ではないですが、改善がみられる人が一定数いらっしゃいます。造精機能障害はこれといった治療法がありませんので、精液の酸化ストレスを抑えて精子の質を上げることは非常に重要です。特に、生活習慣の乱れから精液の酸化ストレスが上昇している方は、抗酸化力を持ったサプリメントを飲むというのは選択肢の一つです。
Q. とりあえずサプリを愛用しているのですが、なかなか思わしくありません。選び方を教えて下さい。
今は男性向けにも色んなサプリメントが売られています。理論的には、L-カルニチンや亜鉛など抗酸化力を有した成分が入っているサプリメントを選ぶのが良いと思います。また、単一の成分のサプリメントを飲むのではなく、メネビットのように亜鉛やビタミンなど基本となる栄養素をベースで配合しているものがおすすめです。
Q. ふたりで妊活をするコツを教えてください
おふたりで、子どもが欲しいというモチベーションがどの程度あるのかのすり合わせはした方が良いかもしれません。今回、色々なご事情からタイミング療法を続けることが難しいですというご相談を多数いただいたのですが、タイミングが合わずに時間だけ過ぎていくのはもったいないことです。男性も女性も年齢の影響がありますので、子どもが欲しいとおふたりが決められたのであれば、妊活に本気で取り組む時期は早いに越したことはありません。実際、不妊治療の成績も若い方の方が良好です。
とはいえ、タイミングの取り方で悩まれるというのは、日本の性の問題が関係していると思います。日本人は性行為の回数が世界一少ない民族として知られていますが、これは結婚してしまうとパートナーを家族、仲間として受け入れてしまうことから、逆に性的な興味を持たなくなってしまうことも関係していると言われています。
おふたりが話し合って、お子さんが欲しいということでご意見が一致される場合は、排卵日を共有し、生活習慣を一緒に改善し、一緒の方向を向いて妊活をされることをおすすめします。また、性行為にどちらかが乗り気じゃない場合は不妊治療に頼っても良いと思います。
ぜひ、おふたりが将来どのようなご家族でいたいかを含めて話し合って、妊活をスタートしてみてください。
Last Updated : 2023/May/29 | CH-20220627-04