BMI(Body Mass index)は身長と体重から算出される肥満や低体重(やせ)の判定に用いられる指標です。
妊娠中の体重増加指導の目安※1
妊娠前のBMIによる体格区分ごとに、妊娠中の体重増加の目安は異なります。
体格区分※2 | 体重増加の目安 |
低体重(やせ):BMI18.5未満 | 12〜15kg |
普通体重:BMI18.5以上25.0未満 | 10〜13kg |
肥満(1度):BMI25.0以上30.0未満 | 7〜10kg |
肥満(2度以上):BMI30.0以上 | 個別対応(上限5kgまでが目安) |
※1 「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」産婦人科診療ガイドラン産科編 2020 CQ 010 より
※2 日本肥満学会の肥満度分類に準じた。
※日本産婦人科学会「妊娠中の体重増加指導の目安」より
バランスのよい食事を1日3食摂ることを基本にして、適切な体重管理を心がけましょう。
体格が「肥満(1度)」
体格区分が「肥満(1度)」の方は、妊娠中の体重増加の目安が7~10Kgです。妊娠中の体重の増加が多すぎると、4,000gを超える巨大児など妊娠週数に対して大きな赤ちゃんが生まれる可能性が高くなります。
また、難産や帝王切開の可能性も心配されます。大きく生まれた赤ちゃんは、呼吸不全や低血糖を起こしやすいばかりでなく、将来肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすいともいわれています。
妊娠中の体重管理で気を付けたいのが、「つわりの時期」「つわりが終わった時期」「産休に入った時期」「里帰りの時期」「妊娠10ヶ月に入った時」の5つのタイミングです。体調や生活が変化し、体重の増えすぎが起こりやすいタイミングなので、体重管理を意識して行うとよいでしょう。また、ご家族に糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)など生活習慣病の方がおられる場合には、それらに関わる食事にも注意する必要があります。
次に、バランスのとれた食事のポイントを見ていきましょう。
妊娠をきっかけに毎日の食事を見直しましょう
主食を中心に、エネルギーを
妊娠中は、赤ちゃんの成長や妊婦の体調維持のために多くのエネルギーが必要になります。エネルギーになる主な栄養素と言えば、炭水化物です。炭水化物を多く含む、お米や小麦、イモ類などの主食を適度に毎日食べるようにしましょう。パンやめん類は、塩分も多く、一品だけのメニューになりがちなので、ごはんと主菜・副菜が揃ったメニューの方がおすすめです。
副菜で、ビタミンやミネラルを
各種ビタミンやミネラルは、からだの機能を正常に保つのに必要不可欠な栄養素です。特に妊娠中は、胎児の成長に重要な役割を果たします。カルシウムは赤ちゃんの骨や歯を作り、鉄は血液を作るのに必要です。
カルシウムは女性に不足がちな栄養素ですので、乳製品や緑黄色野菜、豆類、小魚などを毎日食べるようにしましょう。妊娠初期の胎児に必要な葉酸も、意識的に摂ることが大切です。
主菜で、たんぱく質を
たんぱく質は、筋肉や皮膚、髪の毛、爪、内臓、神経などの材料になり、からだの機能の維持に必要な栄養素です。そして、胎児のからだを作る重要な栄養素です。肉や魚、卵、大豆・大豆製品などを使った主菜でたんぱく質を摂るようにしましょう。
特に、良質なたんぱく質(からだでは作れない必須アミノ酸を多く含むもの)は、肉・魚・卵などの動物性たんぱく質に多く含まれます。毎食のメニューにこれらの食材をとりいれるようにするとよいでしょう。
ここで示した体重増加量は、必ずこの範囲内に収めないといけないわけではなく、あくまで目安です。また、体重管理を徹底するあまり、食事を抜くなどもかえって良くありません。バランスのとれた食事と食事の量を意識して、3食きちんと食べるように心がけてみましょう。
葉酸や鉄を食事から摂るには、何をどれくらい食べたらよいのでしょうか?
妊娠中期や後期に厚生労働省が推奨する量の「葉酸」を食べ物で摂取しようとすると、枝豆(ゆで)なら約93さや、アボカドなら約3個毎日食べる必要があります※1。
また、「鉄」が不足している方が食べ物で鉄を補う場合、牛もも肉(赤身)なら約8.5枚、納豆なら約12パック食べる必要があります※2。
1日に必要な | 葉酸480μg※ | を食品で摂るには |
※ 妊婦(18歳以上)に推奨されている摂取量
1日に必要な | 鉄16mg※ | を食品で摂るには |
※ 妊婦(30歳~49歳)に推奨されている摂取量
※ 厚生労働省:「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
※1 妊婦(18歳以上)に推奨されている摂取量は葉酸480μg
枝豆:1さやの可食部を2g(廃棄率50%*)と仮定し100gあたり260μg含有*、アボカド:1個あたり168㎍含有
*文部科学省: 日本食品標準成分表2015年版(七訂)
※2 妊婦(30代)に推奨されている摂取量は鉄16mg(6.5mg+9.5mg)
牛もも肉(赤身):1枚の可食部重量を70gとした場合
納豆:1パック40gとした場合
葉酸や鉄以外に食事から摂りたい栄養素にはどんなものがあるのでしょうか?
α-リノレン酸やEPAと同じn-3系脂肪酸の1種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、私たちの脳や神経組織、網膜などに多く存在している脂肪酸です。DHAは年齢や性別に関わらず、私たちの体を作り、生きていくために重要な栄養素です。特に妊娠中は、赤ちゃんの発育のためにより多くのDHAが必要になります。
DHAを多く含む食品の代表が魚介類ですが、魚の種類によっては水銀の含有量に注意して摂取する必要があります。メチル水銀は、胎盤を通り抜け、胎児の脳に到達し蓄積し発達障害や神経障害を引き起こすことがあります。マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類、鯨類(鯨、イルカ)など、メチル水銀を多く含む水産物を主菜とする料理は週1回以内(週におおむね合計50~100g程度以下)にすることをおすすめします。
これらの栄養を毎日食べ物から摂るのは難しいかもしれません。特につわりの時期は、なかなかバランスのとれた食事をすることが難しい場合もあります。そうした時には、食事に加えて、サプリメントから不足しがちな栄養を補給することをおすすめします。
困ったことや不安なことがあれば、かかりつけの医師に相談してみるのがよいでしょう。
監修
ご妊娠おめでとうございます。妊娠中の生活について、分からないことや医療機関ではなかなか聞けないことも多いかもしれません。ここでは、妊娠中の体重管理や栄養の摂り方についてアドバイスをしてみました。妊娠中の良質な食生活はお母様と胎児の健康を維持するためにとても大切です。
本ホームページが、お母様そして、ご家族の皆様が、素敵な妊娠、出産を迎え、楽しく子育てが出来るための一助になりますよう祈願しております。
経歴
1984年広島大学医学部産科婦人科教室入局。労働福祉事業団中国労災病院(産婦人科)副部長、JR広島鉄道病院(産婦人科)医長を経て、1995年より産婦人科小児科正岡病院に副院長として勤務。2010年、同病院の院長に就任。
新しい生命を授かるということは、妊娠を知った時からはじまることではありません。なぜならあなたには、妊娠の前にできることがたくさんあるからです。
エレビットは、よりよい形で赤ちゃんを迎えることができるお手伝いをしたいと願っています。
※2025年1月 株式会社RJCリサーチ調べ インターネット調査 調査対象:産婦人科、産科、婦人科、生殖医療関連診療科 150名
Last Updated : 2021/Dec/3 | CH-20211012-19